・相続人は甲、乙
・公正証書遺言で 甲が包括相続
・相続発生により上記公正証書遺言の効力発生
・乙が甲に対して遺留分減殺請求(遺留分相当の土地を求める)
・これにより、当該不動産の所有権は甲から乙へ移転
・乙への所有権移転登記を行いたい
◆甲への相続登記が完了している場合
甲から乙への所有権移転登記
登記の目的 所有権移転
原 因 年月日遺留分減殺
※年月日は乙が遺留分減殺請求の意思表示をした日(内容証明郵便)
遺留分減殺は形成権なので、意思表示により効力発生する
※なお、遺留分減殺請求は裁判外でも可能
その場合は、共同申請となる。(?)
◆甲への相続登記が未了の場合
被相続人から乙への相続登記
登記の目的 所有権移転
原 因 年月日相続
※甲の単独申請
が可能である。
【昭和30年5月23日付け民事甲第973号民事局長回答】
では、これをどのように理解すべきだろうか?
★考え方(1)
所有権の移転の流れは相続登記が未了の場合には、
被相続人→乙 となっているのだろうか。
★考え方(2)
所有権は 被相続人→甲→乙 へと移転 するが、
中間登記(甲への相続登記)の省略がなされている。と解すべきか?
★可能性(3)
所有権は 被相続人→甲→乙 へと移転 する。
中間登記が省略されているわけではなく、
例外的な場合である。
検討
★(1) →以下の理由により否定します。
●遺留分減殺が甲乙間の合意である以上、一度所有権は甲に移転していると解すべきである。
被相続人から乙への(登記上でなく事実上の)所有権移転であるならば、
遺産分割のやりなおしとなるはずで、他に相続人がいるならば、その者も交えて協議する必要がでてこようが、遺留分減殺はあくまで包括承継者と請求者との2者関係の話。
●遺留分減殺は形成権である。
請求時に効力が発生するものである。(遡及しない)
また、遺留分に抵触する遺言はただちに無効となるわけでなく、
相続発生により、効力が発生する。
つまり、時系列は
①遺言の効力発生(=甲へ所有権移転)
②遺留分減殺請求により遺留分減殺の効力が発生(=乙へ所有権移転)
と考えるのが自然である。
●登記という公示制度にすぎないもの
(しかも登記には公信力がない)によって
所有権の移転が左右されてしまうとすれば、おかしな話である。
★(2)→以下の理由により,否定します。
●中間登記の省略と解すならば、
登記の原因は、
年月日甲相続
年月日遺留分減殺
となりそうなものである。(cf 数字相続)
がここでは相続登記となっている。
・・・よって
★(3)が正しいと判断しています。
ご意見あれば教えていただきたい。
*******:
後日談
上記の理由から登記原因証明情報作成につき、
所有権が被相続人→甲→乙へと移転するように構成したのだが、
先生意見としては「相続発生時にさかのぼって所有権が被相続人から乙へ移転」
お尋ねしてみたところ、微妙では在るものの、登記の流れに従って構成したとのこと。
(被相続人から乙へ相続を原因として所有権移転する という登記自体は
先例として認められているので、その流れにしたがう。)
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